こんにちは、ちゃいこです。
同人活動に追われ完全にエネルギー切れを起こしていたのですが、ようやく復活を遂げました。
そんな再開第一段は、またしてもクレヨンしんちゃんがテーマ。最新作「クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ〜拉麺大乱〜」のお話です。ばっちり映画館いってきましたよ!
これまで割と「好き!最高!」みたいな記事ばかり書いてたのですが、今回は批判寄りの内容ですのでご注意下さい。老害ってこうやって誕生するんだなって気持ちです。
あらすじ
ある日のふたば幼稚園。いつものようにいじめっ子に目をつけられるまさおですが、今日はなぜか強気で泣きません。いつもと違う様子に訝しんだしんのすけたちは、こっそりまさおの後をつけます。まさおが向かった先は春日部にある伝統的な中華街・アイヤータウン。まさおはそこで「ぷにぷに拳」というカンフーを習っていたのでした。
もっと強くなって春日部を守るため、しんのすけたちかすかべ防衛隊のメンバーもぷにぷに拳の師匠に弟子入りし、一番弟子である蘭というお姉さん、それからまさおと一緒に練習に励みます。しんのすけはぷにぷに拳について才能を持っており、みるみる上達していきます。他のメンバーも、しんのすけほどではありませんが少しずつ上達。しかし、一番最初に弟子入りしていたまさおだけが上達できず、徐々に劣等感をつのらせていきます。
一方、アイヤータウンでは「ブラックパンダラーメン」という怪しげなラーメン屋さんが流行しはじめます。しかし、このラーメンは食べたものを依存させ、さらには凶暴化させるという恐ろしいラーメンなのでした。春日部の人々は次々とこのラーメンの虜になり、ついにはひまわりまでもがラーメンを口にし凶暴化してしまいます。
プラックパンダラーメンを倒すべく立ち上がるぷにぷに拳一同でしたが、ボスであるドン・パンパンは非常に強敵で、戦いを挑んだ師匠は敗北、「パン・ツー・マル・見え」しか言えない体にされてしまいました。彼らに勝つには伝説上の奥義である「ぷにぷに真掌」を得るしかありません。奥義を求め、蘭とかすかべ防衛隊は猛特訓を始めました。
その最中で、まさおはとうとう劣等感を爆発させ、かすかべ防衛隊を脱退してしまいます。まさおのことも心配でしたが、猶予が残されていないアイヤータウンの状況を鑑みて、蘭としんのすけは中国に渡りました。そして遂に蘭はぷにぷに真掌を得たのです。
ぷにぷに真掌によってドン・パンパンを倒しブラックパンダラーメンを潰した蘭でしたが、そこから蘭の暴走が始まります。少しでも悪だと判断したものは全て罰し、行き過ぎた正義による圧政を敷くようになっていきました。しんのすけたちは依然として凶暴化したままのひまわりの面倒を見ながら、蘭を元に戻す方法を模索します。そんなある日、河原にて行方がわからなくなっていた師匠とまさおに再会。まさおは再び防衛隊のメンバーとして帰ってきます。
師匠らとの会議の末、しんのすけたちは蘭のぷにぷにの心を取り戻す作戦を立てました。それはフォークダンスの一種である「ジェンカ」。春日部の住民たち全員で輪になってジェンカを踊り、その輪に蘭も加えることで、再び蘭の笑顔を取り戻すことに成功しました。こうして、アイヤータウンには平和が戻ったのです。
不満①まさおへのフォロー不足
今回はまさおにスポットライトが当てられるという珍しいパターンのお話でした。
かすかべ防衛隊の中で最初にぷにぷに拳を習い始めたまさおは張り切って先輩風を吹かすのですが、他の子らのようには上達できず、ついには一番ビリになってしまいます。一方、天性の才能でどんどん上達するしんのすけや他のメンバーに対し、まさおは強い劣等感を抱きます。
そして、しんのすけが蘭と同じくぷにぷに拳のすべての技を習得したとき、ついにその感情は爆発しました。
「僕なんてどうせなにやってもダメなんだ」
「ぷにぷに拳なんかで本当にみんなを救えるわけない」
「かすかべ防衛隊なんて馬鹿馬鹿しい」
と泣き、まさおは飛び出してしまいます。
しばらくみんなの前から姿を消すまさおですが、あるとき、家を取り壊されてしまった師匠と共に河原で暮らしているところを発見されます。
そこでまさおは「もう僕はかすかべ防衛隊を抜けてしまったから…」と肩を落とすのですが、すかさずみんなが
「まさおくんさえ望んでくれるならメンバーでいてほしい」
「仮にかすかべ防衛を抜けたとしても友情は不滅だよ」
と伝え、まさおくんは笑顔でメンバー復帰を果たします。
それからまさおくんは、「ブラックパンダラーメンの力で凶暴化してしまったタンポポに、きれいな水をあげつづけたら普通のタンポポに戻った」という発見をみんなに知らせ、「だからひまわりちゃんも元に戻るさ!」としんのすけを励まします。「大事なのは何でもコツコツ真面目にやることなんだ!」と、まさおは悟るのでした。
…という流れです。この流れ自体は悪くないのですが、なんというか…結局まさおに対するフォローが薄すぎて大変不満を感じました。
まさおが劣等感を募らせる描写は序盤からちょこちょこ積み重ねられており、割としっかり描かれています。なのに、フォローというかそれを覆すまさおの見せ場のシーンはさっくり終わってしまうのです。
家が取り壊されたにも関わらずタンポポを救いだし、毎日諦めずにお水をあげ続けた優しさは間違いなくまさおの長所です。それをしんのすけたちとの対話で表現することでまさおのフォローとしたのかもしれません。
でも!!!!もっと!もっとしっかり描写してほしい!!!
このタンポポちゃん、序盤で「ラーメンの汁を上げ続けたら凶暴化したタンポポになっちゃったの!」とラーメンのヤバさを表すために登場した後一回も登場しません。まさおがタンポポを救うシーンもありません。河原でいきなりまさおがタンポポを取り出したところが2度目の登場シーンで、その経緯も(回想シーン等なく)まさおが口で語るのみです。
例えば、先ほどちょっと触れましたがタンポポを救いだすシーンを入れて、周り(風間くんとか)に「どうせ無理だよ」って言われて心配しつつも水をあげ続けるエピソードを挟むとか。
師匠に「焦るでない、お前は他より慎重に鍛練を積む性格なだけだよ」「それにお前は気づいていないかもしれないが、お前には大きな武器があるんだよ」ってどこかで言わせるとか。
最後の最後、山場のシーンでまさおならではの技を見せてみんなのピンチを救いだすとか。
あくまで素人考えなんでベタベタなものばっかりですが、とにかくそういったワンシーンを入れるだけでまさおの報われ方が全然違ったのではないでしょうか。カスな一面ばかりが目立ちがちなまさおがせっかくメインに立てた作品なので、もっと魅力的な面も際立たせて欲しかったです。今のままではまさおが救われなさすぎてなんだか悲しくなってしまいました。
不満②「友情」の演出
かすかべ防衛隊の”絆”の描写についても同様です。先述したように、「僕たちは友達だよ!」「いつまでも同じかすかべ防衛隊さ!」って台詞を言うだけではこちらにその友情の熱さは伝わってこないと思います。カメラワークも特に工夫なく、部屋にみんなで立って話しているだけの状況であったため、なおさらそう感じました。
かすかべ防衛隊の結びつきが非常に良く表現されている作品として、私は真っ先に「ブタのヒヅメ」を思い浮かべます。観たことある方ならわかると思いますが、飛行船から不時着したあと、かすかべ防衛隊の5人でキャンプし、シートにくるまって星を眺めるシーンがあります。
星空に感嘆の声を漏らす彼らのもとには「友情」「仲間」といった台詞はないのですが、その友情の温かさは十分に伝わってきますよね。何かを表現するというのはそういうことではないでしょうか。
「友情濃いめ!」なんてキャッチコピー謳っているんだから、そこはサラッと済ませてほしくなかったなあ…というのが正直な感想です。
不満③野原家の立ち位置
はっきり言うと、今回の作品ではしんのすけを除く野原家のメンバーの必要性を感じませんでした。ひろしとみさえはひまわりの凶暴化をきっかけに事件に巻き込まれ、その後は蘭としんのすけの後についてきて時々説教をかましていただけの印象です。
それならばいっそひろし・みさえもラーメンを食べて凶暴化→しんのすけが家族とアイヤータウンを救いたくて奮闘、の方がシンプルだったのではないかと思います。蘭の闇落ちシーンで「そんなのは正義じゃない!」ってひろしに言わせたかっただけなのかなぁ…。
これはカンフーボーイズだけではなくユメミーワールドやシリリのときもちょっと感じたのですが、ひろしやみさえがイイ台詞・説教をかますポジションみたいなところにおかれているのは腑に落ちない部分があります。
確かに野原一家はしょっちゅうしょっちゅう他人の問題に口を突っ込みますが(巻き込まれているとも言いますけども)、口だけじゃなくて体当たりで突っ込む人たちだと思っています。しかも結構人間的な欠陥はデカイです。それだからこその愛おしさがあるんだから、ただ良いことを言うのではなく、彼らというキャラクターらしさを出してほしいな…という私の勝手な願いです。
不満④ラストバトルが謎
ラストバトルが謎、これはたくさんの批判派から上がっている声ですね…。誤解のなきよう申し上げたいのは、ジェンカという作戦そのものは悪いとは思っていません。クレしんらしい解決方法だな、と思います。それこそ、暗黒タマタマでも歌でボスを倒していたくらいなので。
問題はその過程です。このジェンカ作戦は春日部の民全員が加わっています。その作戦をしんのすけたちが思いついてから実行するまでそれほど時間はなかったのですが、何故か、全員が加わっているのです。まだ凶暴化した人々も完全に戻りきっていないはずなのに。
冷静に考えて、5歳児5人でそれを成し遂げるのは不可能じゃないでしょうか!!
大人たちに協力をあおぐためにチラシを作ってくばるとか、町内放送で流すとか、すぐ凶暴化を鎮める方法見つけたとか、なんかそういう無理やりなりにでも理屈が通っていれば「まぁそういうもんだな」と納得ができます。特にそんなことはなくいきなりジェンカ踊るから問題だと言っているのです。
※一応、ジェンカ自体は映画冒頭のふたば幼稚園にて登場しますが、伏線はそれだけです。
しかも散々ぷにぷに拳特訓してきたのに、特訓シーンもとっても良かったのに、ラストバトルでぷにぷに拳しない。な、なんで~!!!せめて一回ぷにぷに拳で挑んでそれでも勝てなくてジェンカに流れて欲しかった…。
春日部市内で踊っていたはずなのにいきなり舞台が山中の広い草原に移っていた点については、あくまでイメージ上の演出であることと全キャラ写しきりたいという制作側の都合でのことだと解釈しておりますのでギリギリ納得しています。でも後ろで観賞していた子供は「ここどこ?なんで移ったの?」って言ってました。そりゃそうだよね。
不満点まとめ
以上四点がちゃいこ的引っ掛かりポイントですが、総合しますと、何もかもを台詞だけで言わせるだけで済まそうとしている節を感じたというお話です。盛り上げるための演出と、そこに至るまでの過程がはしょられすぎている…!
何か大切なことをを表現したいときにイイ台詞とイイ雰囲気だけで表したつもりになってしまうのは表現する側の怠慢だと私は思っています。物語の背景&筋の通った理屈による説得力と、言葉以外でそれを表現するエピソード・演出は絶対必要だと思うのです。じゃないと行き過ぎたご都合主義ストーリー、ただのチート話になり果ててしまいます。
子供映画だから台詞で言わせたほうがわかりやすい=おもしろいと思えば、そうとも限らないと思うんですよね。ナウシカとかもののけ姫だってそうじゃないですか。台詞で言われていないことがたくさんあって、繰り返し観たり、年を重ねたりするにつれて少しずつ解釈が深まっていく面白さがありますよね。もちろん、そればっかりだとメインターゲットである子供たちが置いていかれかねないので、バランスは難しいところではありますが。
もちろんいいところもあるよ
まず、絵がめちゃめちゃかわいい。チャイナコンセプトのイラストめちゃめちゃのめちゃに可愛いです。エンドロールの水彩風イラストもかなり凝っていて、イラスト集出してくれんかなと思う程度には良かった。ユメミーワールドらへんから新しいデザイナーさん入ったんですかね?(適当)わかりませんが、ここ数年のキャラデザはかなり秀逸ですよね~。蘭ちゃんも、名前忘れたけどソーセージ振り回してたオカマっぽい2人も好きでした。
それから、カンフーネタが結構マニアックだったような気がしました。気がしました、というのも、私がカンフー映画に疎いため「あっ、ここ多分元ネタあるな」的な直感でしか観測できていないのです。しかしtwitter等の反応を見る限りやっぱりそうらしくて、カンフー好きな人であればにやにやしながら見れるのではないでしょうか。
また、最近のしんちゃんにしては割と際どいネタ入れてんなという印象でした。例えば「蘭ちゃんと繋がりたい…」みたいな心が汚れている人には下ネタにしか聞こえない台詞ですとか、「ブラックパンダラーメンを食べたら過払い金が全て返ってきました」みたいなまさにブラックジョークですとか。それから最近は保護者からクレームが入るのですっかり無くなってしまったみさえのゲンコツシーンもあります。スクリーンならOKなんですかね。
そしてなんといっても、懐かしのメンバーを出してくる演出はやはりニクいですね。ミッチー・ヨシリンや埼玉紅さそり隊が出てくるのは想定内だったのですが、またずれ荘のオールスター、書店員のお二方、そしてなんと売間久里代とかいうクソ大昔から存在するマイナーキャラまで出てくるとは思わず。見つけたとき「こいつらまだ生きてたんだ!!」と気分が高揚しました。
結論
地上波放送時には復習・再考察を兼ねてもう一回見るし、アマゾンプライムに入ってきたらやっぱりもう一回見る。
いろいろ私も見落としているかもしれませんし、2周目以降めちゃくちゃ楽しかったという声もあがっていますので。なんやかんやファンというのは、ファンになってしまったもん負けだなあという気持ちです。
この作品がハマった人には申し訳ないくらいこきおろしてしまいましたが、あくまでも個人的な意見ですので、好きな方は好きだという気持ちを貫いてほしいです。私はもう、しんちゃんが何らかの形で誰かの心に残ってくれればそれで嬉しいので(悟り)。本当ですよ。
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