バイバインについて
「バイバイン」という薬があります。
ネコ型ロボット――通称「ドラえもん」のひみつ道具の一つで、1滴垂らすと対象の物体が5分ごとに2倍になるという薬です。
ドラえもんの活動を記録したコミックスおよびanimationでは、ドラえもんと彼の友人である野比のび太が栗まんじゅうにこのバイバインを使用します。
しかし「5分ごとに倍」ということは1つの栗まんじゅうが2時間で16,777,216個になってしまうようなペースです。当然二人共食べきれず、しかも宇宙に破棄してしまったので、今もこの宇宙のどこかで栗まんじゅうが無限増殖していると言われています。恐ろしい話です。
その危険性から地球上では長らく存在を秘匿されており、「フィクションでは?」と疑われていたバイバイン栗まんじゅうですが、この度神奈川県川崎市にて実在を照明されてしまいました。こんなにポップな感じで。
ネット上では次々被害報告があがっています。
「バイバインde無限くりまんじゅう」チャレンジ、4バイで終了しました🙃 pic.twitter.com/A2fgF9eyJC
— KUSU (@_KUSU_design) November 10, 2019
事態を重く見た我々は被害の実態を調査すべく、バイバインが発見されたという「藤子・F・不二雄ミュージアム」へと向かいました。
チケット購入
藤子・F・不二雄ミュージアム(以下現場とする)は完全日時指定のチケット制で、入場数が制限されています。
チケットの発売は毎月30日となっており、一時は人気すぎて休日のチケットを取りづらかったようですが、私たちが調査した11月上旬は当日でも購入できました。
なお、チケットはローソンのLoppiでの販売となっておりまして、当日現地では購入できませんのでご注意ください。
シャトルバスはこのように藤子カルチャーに侵食されており、正直気分が高揚します。しかし今回はバイバイン調査ですので、冷静に資料写真を撮影しました。
そこから10〜20分ほどバスに揺られるのですが、途中で運転手さんが橋の欄干がドラえもんデザインになっていることを教えてくれました。あのネコ型ロボットは街にもしっかり浸透しているようです。
しばらくしてミュージアムに到着。サムネに使用している写真は、外壁のレンガに紛れているドラえもんeyesです。様々な表情のレンガが隠されていました。
入館
早速入館すると、かわいいお姉さんから「もしもしでんわ」を受け取りました。入場者に配布される音声ガイドです。実際に電話のように耳に当てることで、解説を聞きながら展示室を回れるという寸法です。
このもしもしでんわは大人用・子供用の両方の音源が収録されているので、親子で一緒に楽しむこともできます。
展示スペースは撮影禁止となっているため写真はありませんが、ひろびろゆったりと見て回れる展示でした。完全日時指定にしているあるだけあって人もそれほど多くなく快適です。
常設展は、一話まるまるっと読めるエピソードが用意されているなど思っていたよりずっと見応えのある内容でした。会場内のあちこちに、作品に登場する小物(ドラえもんのひみつ道具とかキテレツの奇天烈大百科とか)も展示されているのですが、ただガラスケースに並べるだけではなくて引き出しから覗くような形になっていたり、子供が屈んで覗き込むような場所に設置されていたりと遊び心を感じる工夫が施されています。
次に企画展です。今回訪れたときには、「ドラえもん50周年展」の第1期が開催中でした。たまたまですがキリの良いタイミングですね!
50周年を記念すべく、贅沢に展示される第一話〜初期の原画の数々。圧巻です。ドラえもんは小学館の学年誌で掲載されていたのですが、全て統一した原稿ではなく学年ごとに描き分けていたそうで、その原稿の比較がなかなか面白かったです。大まかなストーリーは同じなのですが、展開や台詞が対象の子供に相応しいように書き換えられていました。小学1〜6年生=月に6本原稿を描くとなると、どういうスケジュールなのか想像もつきませんけどね……。
書き分けの件だけではなく、F先生は子供向けのコンテンツを作ることに強い情熱を持っておられた方だったようです。
会場内に、先生の机を再現した展示があります。そこでは壁一面に本が詰められ、時々趣味である化石標本や骨董品が飾られています。先生は何を描くときにも必ず資料や標本をあたり、正確に描くことにこだわっていた、との説明がありました。
先生の言葉に、「良質の娯楽を提供したい」というものがあります。子供向けだからといっていい加減な漫画を描くのではなく、子供こそ見抜く力があるのだから、読者である子供の立場に立って彼らの心にリアルに届くような漫画を描かねばならない、という言葉です。手間はかかるものの学年ごとに話を書き分けたのも、物を描くときは事実に忠実に描くよう努めていたのも、全てこの思想に基づいてのことなのだと思います。
私は年齢的にはもう完全に大人ですが、子供向けコンテンツが大大大好きです。
人間みな昔は子供でしたから、子供向けに作られたコンテンツというのは普遍的なメッセージを持っているんですよね。F先生のような真摯に作られた作品から届けられるそのメッセージは、大人向けの作品とはまた違った真っ直ぐさで突き刺さる。そのときの感情の揺れ動きがとても大切なものに思えるから、私は何歳になっても子供向けコンテンツから離れられないのだろうなあと思います。
展示を見て回りながら、そんなクリエイターの情熱に直接触れたような気がして一人じぃんとしてしまいました。
本題
しんみりしたあとは、本題であるバイバインの調査です。調べによるとバイバインはカフェで食することができるとのこと。早速カフェに……えっ???
めちゃくちゃ並んでました。びっくりした。
閉館時間が迫っていたし、まだまだ見て回る場所があるということで……今回のブログの本題であった……バイバインの調査については………………破棄!!!!!!!また今度来よ!!!な!!!!!
というわけでカフェはスルーし、中庭(「はらっぱ」と呼ばれています)に出ました。中庭にはのび太たちがよく遊んでる土管やピー助、どこでもドア、各藤子キャラクターのオブジェが点在しており、フォトスポットとしても楽しむことができます。
その1。クリスマス前(このときは11月)になると、中庭にクリスマスツリーが現れます。この日だけだったのかどうか分かりませんが、点灯式がありました。そこまでゴージャスに飾り付けられてはいませんが、サンキャッチャーが枝にさげてありキラキラ綺麗でした。
その2。こっちが重要なんですが、冬は日が沈むのが早すぎて16時に入場するとすぐに外が真っ暗になります。フォトスポットをフォトスポットとして利用するには難易度が跳ね上がりますのでご注意下さい。これは実際に暗すぎて写真がブレまくった人間からの忠告です。
本当は土管に乗って写真を撮りたかったんですが、土管の上にみんなで並んで座っているキッズを押しのけて写真を撮る勇気はありませんでしたのでこれは断念。アンパンマンミュージアムでも同じ現象ありましたね。その他のところでは撮影できました。暗かったけど。
その後館内にもどり、ミュージアムショップへ。
最近のグッズデザイナーは大人が使っても差し支えないようなおしゃれ可愛い商品を出してくるので本当に恐ろしいです。流行りなんでしょうが、カービィやクレしんもシンプルでオシャレなデザインのグッズ増えてますよね。
あまりにも可愛いグッズが多すぎて悩みに悩んだ結果、複製原画ポストカードのセットを選びました。旦那はアクスタと手ぬぐいを選んでいました。レジで会計する際にクリスマスの特別シールをいただいたので、家に帰ってさっそくゴミ箱に貼りました。
※我が家では可愛いシール、貴重なシールはゴミ箱に貼る風習があります。というか他に貼るところがない。
感想
思っていたより展示がてんこ盛りだったので後半は駆け足となりましたが、とても楽しい美術館でした。ガチガチのオタクじゃなくても、「ドラえもん昔好きだった〜!」という方なら十分楽しめると思います。何より、漫画から「漫画が好き!!」という気持ちが伝わってくる作品に触れたことは創作活動のモチベーションアップに繋がりました。
また、今回は立ち寄っていませんが、館内にはF先生作品を自由に読めるスペースがあります。私はコミックについては全く読んだことがないので、今度これを読むために来るのもアリだなと思いました。
しかし、バイバインの調査をできなかったことだけは心残りです。次いついこうかな…と帰りのドラえもんバスに揺られながらホームページを眺めていたところ、衝撃の事実が発覚しました。
"ご提供は11月30日まで"
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さて、みなさん、美術館に行く前はしっかり下調べをしてから楽しんでくださいね。
それでは!
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